西暦二〇〇八年の迷走──マリーン・ワンの影、消えた設計図と漂う危機

西暦二〇〇八年の迷走──マリーン・ワンの影、消えた設計図と漂う危機

2008年、アメリカ大統領専用ヘリコプター「マリーン・ワン（Marine One）」の機密設計図が、知らぬ間に闇へと流れた。舞台はメリーランド州ベセスダの防衛関連企業。ある従業員が自宅のPCに保存していたデータが、ピア・ツー・ピア（P2P）ファイル共有ネットワークを通じて世界へと拡散したのだ。その痕跡は、遠くイランのIPアドレスを持つコンピュータ上で発見された。

この事件が公にされたのは2009年3月2日、Computerworld の記事によるものだった。国家機密がP2Pの網に絡め取られるという衝撃の展開に、米国防総省は情報管理体制の見直しを余儀なくされた。軍需産業や政府機関でのP2Pネットワーク利用が厳しく問われ、機密保持の規制強化が求められる契機となった。

マリーン・ワンは、シコルスキーVH-3Dを改造した大統領専用機である。その設計図流出が示唆するものは、単なる情報漏洩ではない。それは、国家の安全保障の根幹を揺るがす一つの兆候であった。これを受け、政府は警戒を強め、新型大統領専用ヘリ VH-92A の導入を急ぐこととなる。2024年、VH-92Aの配備が完了し、VH-3Dは静かにその役目を終えようとしている。

関連情報
- 事件発覚: 2009年3月2日 Computerworld 掲載
- 原因: メリーランド州ベセスダの軍需産業企業の従業員がP2Pネットワークを使用し、機密データを流出
- 影響: イランのIPアドレスを持つコンピュータ上で発見され、国家安全保障上の脆弱性が問題視される
- 対策: 米国防総省がP2Pネットワークの使用制限を強化
- 後継機: 2024年、新型大統領専用ヘリ VH-92A の配備完了予定