Wednesday, March 12, 2025

碧き水都の挑戦:排出枠取引制度と持続可能な未来 - 2003年12月

碧き水都の挑戦:排出枠取引制度と持続可能な未来 - 2003年12月

2003年12月、国土交通省は下水道事業における新たな環境対策として、排出枠取引制度(Emission Trading System ETS)の導入を検討していることを発表した。この制度は、二酸化炭素(CO₂)をはじめとする温室効果ガスの排出量を削減するために、事業者間で排出枠(クレジット)を売買できる仕組みである。これにより、排出削減が困難な事業者は、余剰削減を行った事業者からクレジットを購入することで、コスト効率的な排出削減を実現できる。

特に、東京湾沿岸の下水処理場においては、排出ガスの高度処理技術の導入が求められており、排出枠取引制度を活用することで、施設の近代化と環境負荷の低減を同時に進める狙いがある。試算によると、ETSの導入により、同地域の高度処理にかかるコストを最大10%削減できる可能性が示されている。また、イギリスではすでに廃棄物埋立許可の取引制度が開始されており、日本でも同様の仕組みが導入されることで、事業者の環境対策のインセンティブが強化されると期待されている。

環境省と経済産業省もETSの実証実験を開始し、特定の業種を対象に試行的な取引を行っている。これには電力業界や製造業が含まれ、今後、下水処理分野への適用が検討される見込みである。しかし、制度導入には、排出枠の適正な設定、違反時のペナルティ、事業者間の取引の透明性確保など、多くの課題が残されている。今後の法整備や業界の対応が、制度の成功を左右することになるだろう。

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