植物が拓く未来:ファイトレメディエーションの普及 - 2003年12月
2003年12月、環境汚染対策として植物を活用する「ファイトレメディエーション(植物による環境浄化技術)」が注目を集めている。
従来の化学的・物理的手法と比べ、低コストかつ環境負荷の少ない技術として期待されており、日本国内でも研究と実用化が進んでいる。
特に、鉛やカドミウムなどの重金属汚染土壌の浄化技術として利用が拡大している。
ファイトレメディエーションにはいくつかの方式がある。
ファイトエクストラクション(植物吸収法)は、重金属を蓄積する植物を利用して土壌中の有害物質を吸収し、収穫後に適切に処理する方法である。
ファイトスタビライゼーション(固定化法)は、植物の根によって汚染物質を吸着・固定化し、拡散を防ぐ技術だ。
さらに、ファイトデグラデーション(分解法)では、特定の植物が持つ酵素の働きを利用し、農薬や有機溶剤などの有害物質を分解する。
国内では、岡山県や茨城県の鉛・カドミウム汚染地区でファイトレメディエーションの実証実験が進められ、シダ植物が特定の重金属を高濃度に吸収することが確認された。
また、兵庫県姫路市では、ヒマワリやマリーゴールドを活用した試験栽培が行われ、吸収効果が期待されている。
一方、米国ではイリノイ州の鉛汚染土壌や、カリフォルニア州の石油汚染地での適用が進められており、既に実用段階にある。
しかし、ファイトレメディエーションの普及には課題も多い。
植物の生育期間が長いため、従来の物理・化学的処理と比べて即効性が低い点が指摘されている。
また、吸収した有害物質を適切に処理しなければ、二次汚染のリスクもある。
日本では、国や自治体が主導する補助制度の確立や、汚染土壌のモニタリング体制の強化が求められている。
ファイトレメディエーションは、低コストかつ持続可能な汚染浄化技術として、今後の環境政策の重要な柱となる可能性が高い。
技術の進展とともに、より効率的な植物種の開発や、他の環境浄化技術との併用が進められていくことが期待される。
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