夜に響く孤独の歌 ― 1978年9月27日~10月10日、浅川マキとその時代
浅川マキ(1942-2010年)は、ジャズやブルースの影響を受け、都会の孤独や退廃をテーマにした音楽を歌うシンガーソングライターである。1978年9月27日~10月10日にかけて、東京・キッド・アイラック・ホールでライブを行い、メディア露出を避けながらライブ活動を中心に表現を続けた。当時の日本は高度経済成長の終焉とオイルショックによる不況の影響を受け、社会には閉塞感が漂っていた。
音楽シーンではフォークブームが沈静化し、ニューミュージックが台頭する一方、浅川マキは流行に迎合せず、夜や孤独をテーマにした楽曲を歌い続けた。そのスタイルはビリー・ホリデイやニーナ・シモンに通じるもので、国内では寺山修司や三上寛らアンダーグラウンド文化の担い手と共鳴し、後の戸川純やUAらにも影響を与えた。
彼女の音楽は、都市の片隅に生きる人々のための歌であり、光の届かない夜の世界を描いた。流行とは無縁のスタイルながら、その深い詩情と独特の歌声は、当時の社会の閉塞感と共鳴し、夜の住人たちを魅了し続けた。彼女の歌は単なる音楽ではなく、孤独を抱える者たちへの寄り添いであり、都会の夜に響くひとつの詩だった。
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