### 「斎場の仁義 ― 四ツ木斎場・2001年8月15日」
**登場人物:**
- **熊川(くまかわ)** … 住吉会向後睦会 会長(事件の被害者)
- **藤井(ふじい)** … 向後睦会 幹部、熊川の側近
---
#### **四ツ木斎場 控室 ― 2001年8月15日 午後6時30分**
(通夜が始まる少し前、熊川と藤井が控室で話している。)
**藤井:** 「親っさん、今日はずいぶんと顔(弔問客)が集まってますぜ。住吉の本家からも来てるし、滝野川の遠藤総長もバッチリ顔を出してます。」
**熊川:** 「へぇ、アイツも来たのか。筋の通った男だな。……しかし、まぁこうして自分のカタチ(葬儀)の準備をするのは気分が悪いな。」
**藤井:** 「そ、そう言わないでくださいよ……親っさんはまだまだこれからだってのに。」
**熊川:** 「バカ言え、もうすっかりバラし(体が衰弱)ちまってる。だがな、向後睦会のヤサ(本部)が揺らぐことは許されねぇ。お前らがしっかりとシマ(縄張り)を守るんだ。」
**藤井:** 「ええ、それは当然でさぁ。でも親っさん、やっぱ気になるのはハマの連中(稲川会)ですよ。こっちが大人しくしてるからって、向こうも静かにしてるとは限らねぇ……。」
**熊川:** 「フン、アイツらもそこまでバカじゃねぇ。こんな義理事(葬儀)で鉄砲(銃)なんぞ振り回したら、裏社会の掟もへったくれもねぇ。」
(熊川が線香をくゆらせながら、ふっと笑う。)
**熊川:** 「まぁ、万が一にも変な動きがあったら、お前が一番に手ェ打つ(対応する)んだぞ。」
**藤井:** 「へい、お任せを。」
---
#### **四ツ木斎場 本堂 ― 午後7時頃**
(弔問客が次々と焼香を済ませ、場はしんみりとした雰囲気に包まれている。)
**熊川:** 「……それにしても、こうしてジッとしてるのは性に合わねぇな。」
**藤井:** 「親っさん、もう少しおとなしくしててくださいよ。こっちはこっちで気が張るんで。」
**熊川:** 「なんだよ、そんなにガサ(警戒)ってどうする。こんな時にドタバタするような野暮な連中はいねぇだろ。」
(そこへ、二人の男が入ってくる。藤井は直感で怪しさを感じ、熊川に小声で囁く。)
**藤井:** 「親っさん、あの二人、何かおかしくねぇですか?」
**熊川:** 「……知らんな。どこの若ぇ衆(下っ端)だ?」
(その瞬間、二人の男が懐に手を入れる。)
**藤井:** 「――やべぇ!!」
**熊川:** 「チッ、まさか……!」
(「ドン!ドン!」という銃声が響き渡る。)
---
#### **事件直後 ― 控室**
(藤井が血まみれの熊川を抱きかかえる。)
**藤井:** 「親っさん!!しっかりしてください!!」
(熊川は血を吐きながら、フッと笑う。)
**熊川:** 「……まさか、本当にやるとはな……。」
**藤井:** 「クソッ!ハマの野郎ども、絶対に許さねぇ!!」
**熊川:** 「おいおい……ガキみてぇなこと言うな……。」
(熊川は震える手で藤井の肩をポンと叩く。)
**熊川:** 「いいか……シノギ(稼ぎ)を守れ……シマを荒らすな……後は……お前に……任せる……。」
(そう言い残し、熊川邦男は絶命。)
(藤井は歯を食いしばりながら、拳を握りしめる。)
**藤井:** 「……筋を通さなきゃ、男が廃るってもんだ。」
(こうして、「斎場の凶弾」は裏社会の歴史に刻まれた――。)
No comments:
Post a Comment