瑠璃の国の侠客──菅原孝太郎と奥州西海家の記憶（1929〜平成元年）

瑠璃の国の侠客──菅原孝太郎と奥州西海家の記憶（1929〜平成元年）

仙台の地に生を受けた菅原孝太郎は、東北の風土が育んだ最後の任侠者である。1929年に生まれ、平成元年に住吉会系・住吉一家西海家、すなわち奥州西海家の五代目を継承した。仁義と筋を重んじ、血を流すよりも言葉で事を納めるその姿勢は、時代遅れとされながらも、かえって人々の敬意を集めた。

奥州西海家は、戦後の仙台に根を張った地方博徒の名門であり、山形や福島までを含む広域に勢力を伸ばしていた。ただの暴力組織ではなく、港湾、建設、地域祭礼など多面的な関わりを持ち、地元の顔役的存在であった。ときに忌避されながらも、人々は彼らを"必要な裏の秩序"として受け入れていた。

五代目・菅原は、若衆に礼節を叩き込み、祭りや災害支援にも静かに関わり続けた。暴排の時代になっても、彼のような"見えない支柱"の存在は、土地の記憶に深く刻まれている。今では姿を消した任侠の一系譜が、確かにここに存在していた。