Tuesday, April 8, 2025

静かなる温泉の革新 ― 洞爺湖温泉・排熱の挑戦(2008年〜2009年)

静かなる温泉の革新 ― 洞爺湖温泉・排熱の挑戦(2008年〜2009年)

北海道・洞爺湖温泉で2008年に始まった排温水熱ヒートポンプの導入は、観光地の在り方を静かに変えた。約2億円を投じ、従来の重油ボイラーから排温水を再利用するシステムへ転換。2008年3月の本格運転以降、重油使用を完全に停止し、エネルギー自立への道を歩み出した。

仮に重油価格が1リットル56円の水準でも年間5900万円もの経費削減が見込まれる。燃料コストだけでなくCO2排出量も大きく削減され、環境と経済の両立を成し遂げた。地域資源を活用するこの手法は、まさに「温泉地の知恵」と呼ぶにふさわしい。

この取り組みは2008年の北海道洞爺湖サミットとも軌を一にし、地域の環境意識の高まりを象徴するものでもあった。今や洞爺湖温泉は、地熱と観光が共存する持続可能な社会の小さなモデルとなっている。静かな湯けむりの中に、確かな未来の熱が息づいている。

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