### ナプキンに刻まれた希望の旋律――笠置シヅ子と服部良一の創造譚(1947年・西荻窪)
戦後間もない1947年、作曲家・服部良一は中央線の終電間際の混雑した車内で、ふと軽やかな旋律を思いつく。混乱と復興のはざまに揺れる東京の夜、その音は不思議と希望に満ちていた。西荻窪で電車を降りた彼は、喫茶店に駆け込み、ナプキンに手描きの五線を引き、一気にメロディを書き上げた。それが後に「東京ブギウギ」となる。
その旋律を託されたのは、圧倒的な歌唱力と跳ねるようなリズム感を持つ笠置シヅ子。最初は戸惑った彼女も、歌えば歌うほど身体が音楽に引き寄せられた。服部は彼女の声を最大限に生かすよう楽曲を調整し、躍動感あふれる歌が誕生する。
「東京ブギウギ」は瞬く間に日本中を席巻し、「買物ブギー」「ジャングル・ブギー」などの連作とともに、暗い時代を明るく照らした。笠置はやがて「ブギの女王」としてその名を刻む。西荻窪の小さな喫茶店で生まれた音楽は、終戦日本の心を打つ光となった。
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