## 静かなる証言――脳が開く司法の扉（2008年9月）

## 静かなる証言――脳が開く司法の扉（2008年9月）

2008年、司法の現場に科学が入り込もうとしていた。日本では自白が重視され、時にそれが冤罪を招いてきた。長時間にわたる取り調べの末に得られた言葉が「真実」とされるこの国で、研究者たちは脳スキャン技術を通じ、記憶の奥に沈む真の経験を読み取ろうとしている。冤罪を防ぐ手段として期待される一方、科学の名を借りた別種の暴力になりはしないかという懸念も根強い。

インドでは、ある殺人事件の裁判でこの技術が決定打となった。女性被告の脳は過去の出来事を知っていると語った。その脳波の動きが彼女の「罪」を証明するものとして認定されたのだ。脳は沈黙の臓器である。しかし、科学者たちはそこに証言を見出した。

けれども脳が語る真実とは何か。それは確かな記憶なのか、それとも誘導された幻想なのか。科学は法を助けるのか、あるいは歪めるのか。脳内の電気信号が法廷で人の命運を決める日が訪れた今、私たちは「真実」と「証拠」の境界を改めて問われている。脳の奥で揺れる記憶の光を正義の灯と見なすには、あまりにまだ光は弱い。