風を食む牛たち――再生の風景・2004年5月
2004年、日本の農村は静かに変わりつつあった。神奈川県津久井区では、高齢化と耕作放棄により荒れた土地に、牛を放つという素朴で大胆な再生策が始まった。1平方キロに1頭、20日で草を食み尽くす牛の働きが、除草と土地保全を同時に成し遂げたのだ。この取り組みは徳島や島根にも波及する。徳島では「阿波牛」の繁殖を支える中山間地の農家が、島根では「島根型放牧」として野生動物の害を防ぎつつ農地と人の営みを取り戻す手法として導入された。そこには、かつての里山の風景と、未来の農村の希望が交差する。この背景には、地球温暖化やバイオマス・ニッポン戦略といった環境政策の進展、農業の多面的機能への期待があった。牛が草を食むという営みは単なる畜産ではなく、地域再生の寓話であり、環境と共生す�
��文明のささやかな試みだった。自然と人との対話は、草の匂いとともに静かに広がっていた。
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