**「夫婦の情を歌に映す――川中美幸のしあわせ演歌」1970年代後半〜1990年代**
大阪府吹田市に生まれた川中美幸は、1955年生まれ。1977年、「あなたに命がけ」で本格的に再デビューを果たし、以来、温かな人情と寄り添う愛を歌う"しあわせ演歌"で知られる存在となった。「ふたり酒」「越前岬」「二輪草」など、夫婦の心の機微を丁寧に描いた代表作はいずれもロングヒットとなり、彼女の素朴であたたかい歌声と相まって、多くの人々に寄り添い続けている。
彼女の歌唱は、派手な節回しを避け、語りかけるような口調と自然なビブラートで、言葉の意味そのものを深く届ける力を持つ。生活の片隅に咲く幸せや、日常の中の情感をすくいあげる姿勢は、聴く者の心をやさしく包み込む。
同時代には石川さゆり、八代亜紀、小林幸子といった強烈な個性を放つ女性演歌歌手が並び立っていたが、川中はあくまで静けさと優しさを大切にし、その対照的な持ち味で確かな地位を築いた。激しさではなく、しみじみとした温もり――それが川中美幸の世界である。
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