甘やかされてるんですよ、世の中――テレビ時代に抗った芸人の覚悟(1980年代)
1980年代、日本のテレビは黄金時代を迎え、芸人たちはこぞってメディアの中へと取り込まれていった。しかしその代償として、芸は"守り"へと傾き、客に媚び、予定調和の中に埋没していく。そんな風潮に対し、立川談志は毅然と異を唱えた。「甘やかされてるんですよ、世の中。弱者が正義ぶってる」と語るその言葉は、テレビの笑いが毒も棘も抜かれ、無害化されていく時代への痛烈な批評であった。寄席での談志は、決して"型"に収まらず、即興でマクラをぶち壊し、時には古典を捨てて漫談に逸れた。観客を驚かせ、裏切るその芸は、予定調和に沈みかけた芸能界において、まさに"発光体"であろうとする者の孤独な意地だった。「プロは客を失望させて当然」というその言葉には、芸人という職能が本来持つべき誇�
�と、時代への批判精神が凝縮されていた。守るな、照らせ。談志の芸は、テレビに飼いならされた世の中に、静かに火を灯し続けていたのだ。
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