闇に埋もれた廃棄の声――岐阜・不法投棄監視の夜明け(1997年11月)
1990年代日本の山あいに「見えないごみ」が静かに積もっていた。経済の余熱が残したのは使い捨てられる産業廃棄物と誰にも見られぬ深夜の投棄。岐阜県の農村地帯では建設業者らによる不法投棄や野焼きが横行し自然は黙して語らず行政もまた沈黙を保っていた。
だが1997年岐阜県は動いた。防災ヘリとパトカーを組み合わせた空と陸のパトロールを導入し毎週山林を監視。これは単なる摘発ではなく「誰かが見ている」という抑止の構造だった。さらに農協や自治会との連携によって地域ぐるみの監視網が築かれた。
当時環境行政はまだ都市を中心に動いていたが岐阜県の取り組みは「地方発・予防型」の先駆けとして全国に知られる。目に見えぬ犯罪に目を凝らし沈黙していた森にひとつの声を投げかけた。その声はやがて制度や法律をも動かす礎となっていく。
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