Saturday, May 24, 2025

埋められた叫び、裁かれた沈黙――豊島・環境犯罪と行政責任の夜明け(2000年)

埋められた叫び、裁かれた沈黙――豊島・環境犯罪と行政責任の夜明け(2000年)

瀬戸内の穏やかな海に抱かれた小島、豊島。その静けさの下には、60万トンの産業廃棄物が眠っていた。香川県が許可した処理業者によって、1970年代後半から次々と運び込まれた廃棄物は、焼却もされぬまま野積みにされ、雨と混じり浸出水となって海と土を蝕んだ。行政は見て見ぬふりを続け、住民の訴えは長く無視された。

だが、1990年、島民たちは立ち上がる。「豊島住民会議」が結成され、悪臭と煙の正体を暴き、環境庁に直訴。全国報道も加わり、1992年には環境庁が香川県の責任に言及した。だが県は沈黙を保ち、現実は動かなかった。1996年、住民は公害調停を申請し、ついに1997年、香川県が監督責任を認め、日本初の「公害調停成立」に至る。

廃棄物は直島へ移送されることとなり、1999年から搬出が始まる。2000年、費用は100億円を超える見通しとなり、全国の自治体はその重みを痛感する。許可を出すだけの時代は終わり、監視と説明責任の時代が幕を開けた。豊島の教訓は、「行政の沈黙」こそが環境犯罪の共犯となり得ることを、静かに、だが確かに告げた。

この島が訴えたのは、ただの汚染ではない。制度の隙間、責任の空白、そして市民の声を黙殺してきた長い歴史への審判だった。豊島は問いかける。あなたは、見て見ぬふりをしていないかと。

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