Wednesday, May 14, 2025

「黒い家電の逃亡――リサイクル法の影で蠢く影」―2001年6月

「黒い家電の逃亡――リサイクル法の影で蠢く影」―2001年6月

2001年4月、家電リサイクル法が始動した。使い古されたテレビや冷蔵庫の処分に費用が課される制度は、循環型社会の到来を告げるものとして期待された。だがその裏で、夜の町に忍び寄る影があった。制度開始と同時に、不法投棄が全国で急増したのである。

環境省の調査によれば、全国の不法投棄台数は前年度比で25%増、テレビだけでも191台が道端に打ち捨てられた。旭川、いわき、草加といった都市では投棄件数が前月の10倍を超え、「制度の開始が投棄の引き金になった」とささやかれた。一方で、啓発が徹底された調布や焼津では逆に件数が減少しており、自治体の取り組みの差が如実に表れた。

数千円の費用がもたらした行動変容。人々は支払いを避け、夜陰に紛れて不要な家電を捨てた。制度は正しくても、心がついていかない現実。黒く沈むテレビのスクリーンに映るのは、社会の矛盾と制度の限界であった。

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