《循環の大地に響く手の音――浙江省台州市と日本静脈産業の交錯 －2002年10月》

《循環の大地に響く手の音――浙江省台州市と日本静脈産業の交錯 －2002年10月》

2002年、中国と日本の間に、静かだが確かな循環の流れが生まれていた。浙江省台州市では、人口50万人のうち実に6万人がリサイクル業に従事していた。古いパソコン、廃プラスチック、スクラップ――それらを解体し、命を与え直す作業は、人海戦術によって支えられていた。手作業は機械では及ばぬ精密さと柔軟さを持ち、再資源化の聖地としてこの都市は世界の注目を集めていた。

一方、日本国内では廃段ボールや鉄スクラップが中国へと次々に輸出され、静脈産業の空洞化が懸念されていた。安価な中国の再生資源市場に押され、日本の回収業者たちは次第に疲弊していく。再資源化の担い手たちが失われるその影には、循環社会という理念のほころびが見えていた。

中国政府は、汚染と混乱の危機に気づき、リサイクルタウン制度を導入、零細業者の統合を進めていた。日本の高度成長期に起きた公害の記憶が、まるで時を超えて中国に投影されたようだった。浙江省台州市に響く解体の音は、単なる作業音ではない。これは、世界の物質文明が再構築を模索する音であり、東アジアの二つの国が、過去と未来の間で交わす無言の対話だった。