北海道・2007年春――風と大地の余白に描かれた再生の絵図
2007年春、北海道の原野に、新しい営みが静かに芽吹いていた。公共事業の縮減により、建設業は仕事と誇りを同時に失い、重機と労働力が宙に浮いていた。だがその余白を、農業と風力発電が埋めはじめる。高齢化と後継者不足で耕作が困難になった農家は、「土地はあるが手がない」と嘆き、建設業者は「手はあるが使い道がない」と応じた。
整地、畝立て、用水路の造成から収穫・出荷まで。農業の"外注化"とも言えるこの連携は、偶然の産物ではなかった。地方経済が沈下する中で、地域に残された資源と技術が結びついたのだ。それは職を失った者たちが、同じ土地で別の役割を見出す、小さな自立の物語でもある。
一方、広大な台地に吹く風を受けて、再生可能エネルギーの象徴である風力発電も動き出す。2007年、地方銀行と信用金庫による協調融資によって、国内最大級の風車群が建設される見通しとなった。建設会社は基礎工事や送電インフラを担い、"風を土に根づかせる"役割を与えられた。
京都議定書の履行を目前に控えた当時、日本中が温暖化対策の現実と向き合っていた。北海道のこの風景には、ただの対策ではなく、喪失から新たな価値を編み直す意志が刻まれていた。風と土、その両方に希望を託した人々の姿は、再生という名の静かな詩であった。
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