Friday, May 9, 2025

オホーツクの風が語るまち――北見市の今と記憶(2025年5月)

オホーツクの風が語るまち――北見市の今と記憶(2025年5月)

北海道の東部に広がる北見市はオホーツク圏最大の中核都市であり旧北見市端野町常呂町留辺蘂町の四町が2006年に合併して誕生した。面積はおよそ1427平方キロに及び道内で最も広く全国でも四番目の広さを誇る。市域は東西に約110キロ東京駅から箱根に至る距離に相当する。その広さゆえ内陸部と海沿いでは気候も異なる。内陸部は寒暖差が激しく夏には30度近く冬には氷点下20度以下にもなる。一方オホーツク海に面した沿岸部では流氷がもたらす冷涼な空気が一年を通じて穏やかな季節感を演出する。

北見市はたまねぎのまちとして全国に知られ日本一の生産量を誇る。さらに常呂地区ではホタテの養殖が盛んで留辺蘂地区ではおんねゆ温泉や山の水族館などが観光資源となっている。かつて世界の七割を占めたハッカの産地としての歴史も刻まれ北見ハッカ記念館ではその往時の息吹を今に伝えている。また常呂は女子カーリング日本代表を多数輩出した地としてスポーツのまちとしての誇りもある。

しかし2025年春北見市は新たな課題と向き合っている。118億円という巨費を投じた新市庁舎の完成から4年財政難が深刻化し教育や福祉といった基本的な市民サービスにまでその影響が及ぼうとしている。市は財政再建を掲げつつも具体的な成果は見えにくく市民の間には不安と苛立ちが漂っている。

それでもこのまちは前を向いて歩く。5月には第3回ゴミフェスが開催され市民たちが清掃活動を通して地域のつながりを確かめ合った。また日本赤十字北海道看護大学では防災運動会が行われ遊びと学びを交えた防災教育が展開された。食文化においても無国籍料理店トナカイによるオホーツク妖怪ビールシリーズや地元のパン店レフボンによるたまコロパンの登場など地元愛と創意が芽吹いている。

自然の脅威とも向き合わねばならない。常呂川では氾濫危険水位を超える事態も観測され気候変動がもたらす影響は確実にこの地に及んでいる。市は防災体制の見直しと情報提供の強化を図り住民の安全を守る努力を続けている。

北見市は今過去の繁栄と現在の試練そして未来への希望をその広大な大地に刻みながら静かにしかし力強く歩みを進めている。

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