Saturday, May 24, 2025

津久井区における農地再生と環境保全の歴史 - 神奈川県

津久井区における農地再生と環境保全の歴史 - 神奈川県

1. はじまり(2004年)

神奈川県津久井区では、2004年に地域の高齢化と耕作放棄地の増加に対応するため、牛の放牧を活用した農地再生の取り組みが始まりました。当初は城山町、津久井町、相模湖町、藤野町の4町が協力し、牛が雑草を食べることで農地を再生し、飼育コスト削減も目指しました。1頭の牛は1日あたり5070kgの草を食べ、1平方キロメートルの農地を約20日間で再生可能とされています。この取り組みは、農村の持続可能な発展を目指し、全国のモデルケースとなりました。

2. 拡大と普及(2010年代)

2010年代になると、津久井区では放牧による耕作放棄地の再生がさらに進み、徳島県など他地域でも「阿波牛」生産の一環として採用されました。中山間地域での和牛放牧は、鳥獣害対策にも効果を上げ、電気牧柵の導入により効率が向上しました。電気柵の設置には10アールあたり10万円のコストがかかりましたが、太陽光発電を活用することで運用費の削減が図られました。

3. 2020年代の進化:スマート放牧の導入

2020年代には、農研機構が中心となり「スマート放牧」技術が導入され、放牧農業の効率が飛躍的に向上しました。GPSを活用した牛の位置追跡システムや、電気牧柵の遠隔監視が普及し、労働時間を従来の1/20に短縮することが可能になりました。また、複数の機械(フレールモアなど)によるトゲのある植物の除去が進み、農地再生が一層加速しました。

さらに、津久井在来大豆の栽培も復活し、2020年時点で63アールの農地が再生されました。この大豆は地域ブランドの発泡酒などに活用され、6次産業化による地域経済の発展を支えています。また、和牛放牧は37ヘクタールに拡大され、240頭の牛が放牧されるなど、規模が拡大しています。

4. 将来展望

今後もスマート技術を活用した持続可能な放牧農業が普及し、農村地域の復興が期待されています。農林水産省は、こうした取り組みに対する助成金制度を強化し、自治体と協力して環境保全と農地再生の推進に力を入れています。

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このように、津久井区の農地再生は単なる農業復興にとどまらず、環境保全、持続可能な地域経済の確立に向けた重要な役割を果たしてきました。これからも、技術の進化と地域の協力により、持続可能な未来の農業モデルが全国へと広がることが期待されます。

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