川崎市川崎区の堀之内町は、今もどこか妖しさと懐かしさが入り混じる町である。京急川崎駅からほど近いこの一角は、江戸時代には東海道川崎宿の一部として栄え、旅籠に仕える飯盛女たちが、旅人の疲れと情を受け止めていた。やがて明治、大正、昭和と時が移ろい、堀之内には貸座敷や置屋が根を下ろし、やや影のある風情を帯びながらも、「遊び」と「癒し」の町として生き続けた。

川崎市川崎区の堀之内町は、今もどこか妖しさと懐かしさが入り混じる町である。京急川崎駅からほど近いこの一角は、江戸時代には東海道川崎宿の一部として栄え、旅籠に仕える飯盛女たちが、旅人の疲れと情を受け止めていた。やがて明治、大正、昭和と時が移ろい、堀之内には貸座敷や置屋が根を下ろし、やや影のある風情を帯びながらも、「遊び」と「癒し」の町として生き続けた。

戦後、堀之内は青線地帯に組み込まれ、やがて「ちょんの間」と呼ばれる簡易風俗店が林立する。布団一枚と蛇口一つ。短い交わりと淡い記憶。そんな店々が、戦後の闇市文化の残照として人々の欲望と孤独を受け止めていた。1960年には「京浜トルコ」が開店し、堀之内はトルコ風呂、のちのソープランド街へと姿を変え、東京・吉原に次ぐ規模を誇るまでになる。

しかし2000年代以降、風営法の強化と警察の摘発により、「ちょんの間」は姿を消し、違法営業の取締りが進んだ。今では歓楽街の表情もやや穏やかになりつつある。町の路地にはまだ微かに湯煙と粧いの気配が漂う。だがその奥には、宿場町から続く女たちの息遣いと、男たちの哀歓が折り重なった記憶の地層が、今も静かに息づいている。