近年、大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの強化に伴い、新たな規制物質の追加がされています。また、環境ホルモンのような微量でも人体に影響を及ぼす物質の問題も顕在化してきました。さらに、ISO 14001認証取得を始めとした企業における環境マネジメントシステムの整備の動きや、それとともに環境報告書などによる情報公開も進んでいます。
そうした中で環境計測証明事業、いわゆる環境測定・分析のニーズが高まる一方で、測定分析会社では、近年急激に増え、そして今後も増えるであろう多種多様な物質の測定ニーズへの対応に追われています。株式会社グローバルチェンジは、こうした環境測定・分析事業のフィールドで測定関連機器の商社事業を展開しています。販売だけでなく、測定機器のレンタルサービスやテクニカルサポートなどの独自路線を取ることで、測定分析業界に不可欠なポジションを確立しています。代表取締役の中林裕貴さん(36)に話を聞きました。
理化学機器メーカーから独立。
「流通コストを抑えて、環境測定関連機器をリーズナブルな価格で提供するとともに、サポート体制の強化によるスピーディーな対応、直接ユーザーと接することで市場のニーズを的確につかみ、製品にフィードバックする、さらには測定機器類のレンタルなど、これまで測定関連業界にありそうでなかった、でも確実に求められていたサービス。これらをぜひ事業化したかった」と中林社長は述べました。
中林社長は、1989年3月に北里大学衛生学部衛生学科を卒業(北里ヘルスサイエンスセンターにて作業環境測定に関する実習及び卒業研究を行なう)後、すぐに理化学機器メーカーの柴田科学器械工業に入社しました。環境計測課に配属され、環境測定分野の国内販売に従事し、その後、1991年4月からは新規開発事業部に配属されました。新規マーケットの開拓、半導体材料ガスセンサーの国内販売、環境関連製品の対米輸出業務、環境関連製品の対米輸入業務に携わりました。環境測定関連製品のマーケットは、大気汚染防止法や水質汚濁方など環境関連法の動向と密接に結びついています。そのため、法規制が実際に施行される3年ほど前から政府で開かれる検討会などとも関わりつつ、新規開発の方向性や仕様を見定めたり、あるい�
��海外マーケットからの輸出入などを手掛けてきました。
「こうした仕事に携わる中で感じたことは、他の製品類と同様に問屋、1次小売、代理店などを経ることで流通コストにより価格が上がってしまうこと。さらには実際のユーザーからの声が遠くなってしまうことだった。とくに環境測定関連機器は、近年の法規制や企業の取り組み強化の中でユーザーである測定分析会社は多様なニーズへの対応を迫られており、専門的な知識を持ち合わせたスタッフによるサポートが必要とされていた」と中林社長は述べました。
そこで柴田科学工業の資本参加も得て独立し、1996年3月に環境測定関連製品の販売・レンタルを業務とするグローバルチェンジを設立しました。
大気汚染防止法改正でレンタルにニーズ。
販売社としては、各機器メーカーと販売契約を結び、メーカー→グローバルチェンジ→ユーザーと流通コストを圧縮することで、1~2割程度、従来よりも安く提供しています。粉塵計やガス濃度計、各種サンプラー、各種流量計、水質測定器などのほか、分析用ガラス器具やろ紙など測定関連器具も取り扱っています。しかし、それ以上に測定関連業界に長く携わってきたからこそ、分かるさまざまな、まさに痒いところに手の届くサービスが同社を特徴づけています。
キャニスター缶やダイオキシンサンプラーなど環境測定機器のレンタルサービスもその一つです。昭和リースなどとも提携して展開している環境測定機器レンタルサービスは、1997年の大気汚染防止法の改正により、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの3物質が規制対象になったことをきっかけに始まりました。
これら微量の揮発性有機化合物(VOC)のサンプリング用器具として欧米などで使われているのがキャニスター缶(写真参照)。自治体や企業などからこれら物質の測定を委託される測定会社では、このキャニスター缶が必要になります。しかし、ある一定の敷地での測定となると数十地点でのキャニスター缶が必要となります。大手の測定会社であればともかく、中小の測定会社ではコスト的にも、あるいは器具の保管場所にも困るかもしれません。しかし、仕事は受けたい。そんなことから生まれたのがレンタルサービスです。
また、キャニスター缶は現場における操作性は至って簡単ですが、測定の準備や分析後のメンテナンスでは細心の注意を払わなければなりません。というのも、分析する物質が非常に微量であるため、サンプリング機器にわずかな物質が付着しているだけでも測定の精度が悪くなってしまいます。実際にサンプリングする前にキャニスター缶を1回分析するという二度手間をかけているケースもあると言います。サンプリングに必要なしっかりとクリーニングされたキャニスターを事前に用意することは大変な労力がいります。しっかりとクリーニング、管理されたサンプリング機器が必要な時に使える、ユーザーにとってはこれもレンタルサービス利用の大きな動機となっています。さらに同社ではキャニスター缶のクリーニングサ�
�ビスも手掛けており、好評を呼んでいます。
その後、ダイオキシン類でも測定ニーズが発生し、サンプラーが必要となりレンタルを開始しました。分析機器はそれこそ日進月歩で開発が進んでいるが、サンプリング機器はそれほどすぐに時代遅れになってしまうというものではありません。しかし、測定分析には不可欠で、かつ数が必要であることなどでレンタルサービスが成り立っています。現在、各種サンプラーのレンタル事業(クリーニング事業も含む)は同社の売上の2~3割を占めています。
機器レンタルのほか人材派遣も視野。
さらに同社の強みとなっているのが提案力です。これまでのキャリアを活かし、行政動向に始まり、顧客からの声など情報を収集し、活かしています。規制強化により多種多様な物質で測定ニーズが生まれたが、その測定手法や必要なサンプリング機器の種類は異なります。測定分析会社に対し、ただ機器を販売、レンタルするのではなく、一歩先を行って必要な機器を提案しています。顧客サービスとして、行政動向や新製品情報などをまとめたニュースレターも発行しています。またユーザーだけでなく、分析機器メーカーからの相談を受けることも多く、用途に合せ分析機器とサンプリング機器とをセットにした商品開発なども行なっています。
さらに今後は、分析機器のレンタルのほか、オペレーターの人材派遣も展開したい考えです。現在、測定分析ニーズは高まっていますが、分析機器などのオペレーターの人材が不足していたり、あるいは不足していないまでも定常的に人材を抱えることが難しい事業所などがあり、オペレーターの人材派遣の必要性は高まっています。
「測定分析会社では今、二極化が進んでいます。一方はさまざまな機器を揃え、人材、機器ともに追いつかないほど委託が集中している事業所。もう一方は機器が揃えられず受託が減っている事業所で、合併などにより対応している所。レンタルサービスはどちらに対してもニーズがありますし、人材派遣は前者でのニーズが高いと考えています」。
環境測定分析の市場は機器類も含め、年間約2000億円とそれほど大きな市場ではありません。また、比較的閉鎖的な業界でもあります。しかし、そうした中で、ニッチの中のニッチで同社は確固としたポジションを築きつつあります。
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