環境 緑の電力を未来へ ― 自然エネルギー促進法構想 1999年
1990年代末、日本のエネルギー政策は大きな転換点を迎えていた。冷戦終結後の石油価格の安定は一方で化石燃料依存を温存しつつも、1997年の京都議定書採択を契機に、温室効果ガス削減が国際的な最優先課題として浮上していた。日本も2008年から2012年にかけて1990年比6%削減を約束し、電力部門に対する圧力が強まっていた。しかし当時の電力市場は地域独占体制のもとで再生可能エネルギー導入が進まず、風力や太陽光のシェアは1%にも満たなかった。
こうした閉塞状況を打破しようと、市民・NGO・環境派議員らが連携して立ち上げたのが「グリーン・エネルギー・ネットワーク」である。彼らは、電力会社に対して自然エネルギーの固定価格での買い取りを義務づける新法の制定を目指した。発想の源泉はドイツの「フィード・イン・タリフ(再生可能エネルギー買取制度)」であり、ドイツでは1991年に制定された法律が風力や太陽光の急拡大を支え、電力構造を変えつつあることが注目されていた。
日本での議論は、環境団体だけでなく、エネルギー自立を願う地方自治体や新エネルギー産業の関係者を巻き込み、議員立法という形で具体化が検討された。既存の電力会社や経済界からは「コスト増による国際競争力低下」を懸念する声も強かったが、地球温暖化対策と地域振興を両立させる政策として、世論からは一定の支持が広がっていた。
この自然エネルギー促進法構想は、2000年代以降の再生可能エネルギー推進政策の先駆けであり、後のRPS法(2003年施行)や固定価格買取制度(FIT、2012年施行)へとつながる布石となった。1999年という時代は、再エネがまだ「理想のエネルギー」とみなされていた段階でありながら、市民と議員の草の根運動が制度化を動かす大きな原動力となったのである。
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