環境 命の循環を見つめる ― 羽村市動物公園ふんリサイクルの物語 1999年
1990年代末、日本ではごみ問題やリサイクルへの関心が一気に高まりつつあった。容器包装リサイクル法が1997年に全面施行され、自治体や企業に廃棄物削減の取り組みが求められる中、地域の現場からも多彩な工夫が生まれていた。そのひとつが、東京都羽村市動物公園で始まった「動物のふんリサイクル」である。
この公園ではゾウやシマウマなど大型動物を飼育しており、毎日のように大量のふんが発生した。従来は処理費用として年間約100万円がかかっていたが、園の関係者は「なんとか有効利用できないか」と考え、堆肥化装置を導入することにした。ふんを発酵・熟成させて堆肥にし、園内の直売所で販売したところ、予想を超える人気を呼んだ。家庭菜園を楽しむ地域住民が次々に買い求め、売り切れになることもあったという。園関係者も「処理費用は半分に減り、しかも市民に喜ばれる。こんなに歓迎されるとは思わなかった」と笑顔で語った。
当時は「リサイクル=負担やコスト増」というイメージが強かったが、この取り組みはむしろ地域経済と市民生活に利益をもたらす事例として注目された。公園のふん堆肥は、循環型社会の理念を体現した小さな実験でもあった。廃棄物を資源に変えるという発想が、単なる環境対策を超えて「暮らしの楽しみ」に転じた瞬間だった。
こうした取り組みは、1990年代に盛り上がりを見せた「市民参加型環境活動」の象徴でもある。大規模な制度改革や企業主導のリサイクル政策とは別に、生活に根ざした小さな試みが人々の共感を呼び、結果的に経済性と環境性を両立させる。その生き生きとした現場の声は、持続可能な社会づくりが決して遠い理想ではなく、日常の中から芽生えることを示していたのである。
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