瓶に宿る麦の香り――ジャックル浦島屋の量り売り挑戦記・2000年
2000年前後の日本は、バブル崩壊後の長引く景気低迷期にあり、消費者の価格志向が強まっていました。スーパーやディスカウントストアの台頭で、酒類販売業界も安売り競争が激化し、特に東京郊外では大型の酒類ディスカウント店チェーンが各地に展開していました。こうした中でジャックル浦島屋は、単なる価格競争ではなく、量り売りという差別化戦略を打ち出しました。
量り売りは元来、焼酎や味噌など日常的な食品で広く行われてきた販売方法ですが、ビールやウイスキーのような嗜好品、特に生ビールとなると鮮度や衛生面での課題が大きく、メーカーは品質保証の観点から許可を出さないのが通例でした。しかし同社はサッポロビールの承諾を得ることに成功します。背景には、消費者が求める必要な分だけ買うという省資源、省ゴミ意識の高まり、そして環境配慮型ビジネスの拡大がありました。当時はペットボトルや空き缶のリサイクル制度が整い始めた時期で、容器再利用による廃棄物削減は企業の環境イメージ向上にもつながったのです。
販売は会員制で、利用者には厳格なルールが設けられました。ビールは購入翌日までに飲み切る、開栓したものはその場で消費する、使用した容器は洗浄して返却する──こうした規定により品質保持と衛生管理を確保しました。店頭では専用の800ml瓶を保証金付きで貸し出し、返却後に再利用。顧客は新しい瓶を受け取り再びビールを購入するという循環型の販売方式で、結果として年間約7トンのPETボトル削減、金額換算で1300万円の節約効果を生み出しました。
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