東京都港区・千代田区/栃木県佐野市 ― 油汚染土壌浄化の取り組み(2007年前後)
2000年代前半、日本では工場跡地や都市再開発に伴う土壌汚染が顕在化し、2003年の土壌汚染対策法の施行を機に、調査・届出・措置の体制が全国で整いはじめた。石油系炭化水素による油汚染は法の指定物質に該当しない場合も多く、自治体ガイドラインや環境省の技術指針を踏まえた自主基準で是正するケースが増え、都市部の建替え・再開発では「早く、確実に、再利用まで見据える」処理スキームが求められた。
この文脈で、鹿島道路(日比谷)、日エ(千代田区)、音坂砕石鉱業(栃木県佐野市)の三者が設立した「ソレック栃木」は、都市発の油汚染土壌を地方の資源循環に接続する実務モデルだった。技術の中核は低温加熱方式(LTTD)。回転炉や熱風乾燥機で土粒子をおおむね150~350℃に加熱し、揮発・蒸散した油分をオフガスとして回収する。オフガスはアフターバーナで高温酸化し、バグフィルタや洗浄塔、活性炭などで粒子・臭気・残留有機分を除去する。処理後土壌は残油分を管理値以下に低減し、粒度調整・含水調整を経て、佐野市の砕石場で埋立用土や整地材として再利用する。これにより、最終処分量を抑え、新規採土の削減にもつながる。
都市側では、港区・千代田区などの再開発現場で発生する汚染土を、覆い付きダンプやコンテナで封じ込め輸送する。現場では一次選別・含水調整・臭気対策を施し、受入側では計量台と受入検査、積下ろしヤードのミスト散布や負圧テントで周辺影響を抑制する。マニフェストによるトレーサビリティの確保、受入・出荷時の迅速分析(PID、赤外分析など)と定期の第三者検証で、品質と透明性を担保する体制が組み込まれた。
LTTDを選ぶ利点は、掘削土を短期間で大量に処理でき、焼却に比べ資材化の余地が広い点にある。重油・軽油・潤滑油由来のTPHやBTEXが主対象で、難揮発成分は温度帯と滞留時間の最適化、あるいは活性炭併用で対応する。高含水・細粒分の多い土では前処理(脱水、粒度分級)を入れて熱効率を高める。一方で、塩素を多く含む混入物があるとオフガス処理負荷が増すため、受入規格と前選別が重要になる。
2007年前後は、原油価格の高騰と京都議定書の削減プレッシャーが重なり、運搬・処理のエネルギー効率やLCAの視点も注目された。都市の浄化ニーズと地方の資材需要を結ぶ「ソレック栃木」の座組は、環境対策・資源循環・地域振興を同時に満たす仕組みとして意義が大きい。港区・千代田区での再開発の迅速化、佐野市の砕石場再生と資材確保、そして広域連携による費用・環境負荷の最適化。これらを一体で進めた点に、この取り組みの先進性があった。
No comments:
Post a Comment