Saturday, August 2, 2025

銭と雲のあわいに生きる筆 ジョージ秋山――昭和46年

銭と雲のあわいに生きる筆 ジョージ秋山――昭和46年
ジョージ秋山は、欲望と偽善、そして人間の弱さを凝視し続けた漫画家である。代表作『銭ゲバ』は、高度経済成長末期の日本を背景に、金こそが人間関係や幸福を支配する現実を冷徹に描いた。貧困に追い詰められた主人公が金を渇望し、手段を選ばず登りつめていく過程は、経済成長の陰で歪んでいく社会を映し出し、読者に不快さと共感の入り混じる衝撃を与えた。

一方の『浮浪雲』は、江戸の宿場町を舞台に、のらりくらりと生きる主人公・雲を中心に人情と機知が交錯する物語である。表向きは時代劇だが、現代の過剰な競争社会や規範意識への皮肉が随所に潜み、日々を受け流す生き方の妙味を示す長寿連載となった。

昭和46年前後の日本は、学生運動の退潮、公害や過労死の社会問題化、テレビ商業主義の加速といった変化が重なっていた。漫画界では劇画や青年誌が台頭し、大人向けのリアルな社会描写が求められる時代である。秋山はその潮流の中で、過激な暴力描写と緻密な心理描写を融合させ、単純な勧善懲悪を拒む作風を確立した。

同世代の永井豪が性と暴力を奔放に誇張し、さいとう・たかをがリアルな社会機構と職業人の生き様を描き、石森章太郎がSFや変身ヒーローで寓話性を追求する中、秋山は金と人間の業を中心に据え、笑いと悲しみを紙面でせめぎ合わせた。その筆致は、時代の矛盾を生々しく伝えると同時に、読者に考える余白を残す「人間喜劇」の域に達していた。

No comments:

Post a Comment