ダイオキシン問題と見えない加害への恐怖(1990年代後半)
1990年代後半、日本社会ではダイオキシンをめぐる不安が急速に拡大した。水俣病など過去の公害と異なり、健康被害がすぐに表れず、影響範囲も見えにくい点が人びとの恐怖を強めた。本号では、焼却炉対策を進める一方で、排ガスや焼却灰に含まれる有害物質が環境に及ぼす影響への懸念が繰り返し語られている。1997年以降、小型焼却炉が高濃度ダイオキシンの発生源と指摘され、自治体は休廃止や大規模化に踏み切ったが、住民側では規模拡大は新たなリスクを生むのではないかという疑念が残った。とくに焼却灰や飛灰が適正処理されないまま処分場に運ばれ、土壌や地下水を長期的に汚染する可能性は、違法でなくとも加害性を伴う行為として受け止められた。ダイオキシンが環境中に蓄積し、生態系を通じて人間に戻ると�
��う時間差の構造は、将来の被害者を想像させる不安を生んだ。本号が描くのは、環境破壊が事件化する前段階で、制度や管理の隙間に潜む加害性が感知され、社会不信として広がっていく過程であり、ダイオキシン問題はその象徴的事例であった。
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