戦後の新宿では、酒場が作家や編集者たちの小さな文壇として機能していた。高見順も酒場「和」に姿を見せ、丹羽文雄ら文学者と酒席をともにした。そこでは原稿や作品だけでなく、雑談や議論、噂話までが作家同士を結び付け、文学が生まれる前の言葉が行き交っていた。高見順は1907年生まれで、戦前から小説や評論を発表し、戦後も文壇の中心人物として活動した。遠来の客を新宿の酒場へ案内し、日本ペンクラブ関係者や文化人と交流した記録も残る。1965年に高見が死去した後も、新宿の酒場文化は続き、作家、編集者、劇団員などが夜ごと集う独特の交流空間となった。新宿の酒場は、出版物には残らない会話や人間関係を通じて、戦後文学を支えたもう一つの文化的舞台だった。
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