日本近海におけるPCB・DDTの海洋汚染-1998年5月
愛媛大学の研究チームが1998年に実施した調査によると、日本近海、特に瀬戸内海や九州西岸沖で捕獲されたゴンドウクジラやシャチの体内から、PCB(ポリ塩化ビフェニル)やDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)といった有害化学物質が高濃度で検出された。シャチの脂肪には、1グラムあたり400マイクログラムのPCBが含まれており、これは陸上動物の約4000倍の濃度であった。さらに、ゴンドウクジラからもDDTが200マイクログラム検出され、環境汚染の深刻さが浮き彫りとなった。
この汚染の原因として、アジア途上国、特に中国やインドネシアでの廃棄物処理が不適切であったことが指摘されている。これらの国々では、電気機器や農薬の廃棄が適切に管理されず、PCBやDDTが大気や河川、そして海洋に流出している。この化学物質は、黒潮などの海流によって日本近海にまで到達し、瀬戸内海や九州沖での海洋生物に蓄積されている。
また、国内でも過去に使用されたPCBが適切に処理されておらず、東京湾周辺の水質にも影響を与えている可能性がある。特に1970年代に廃棄された電気機器や建材に含まれるPCBが問題視されており、日本国内の廃棄物管理の不備も汚染の一因となっている。
この調査結果を受け、環境省は日本近海のモニタリングを強化し、PCBやDDTによる汚染の拡大を防ぐための対策を進めている。
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