琉球の資源革命 – 株式会社トリムの挑戦 - 1998年12月
株式会社トリムは日本で初めて廃ガラスびんを利用した多孔質軽量資材の製造技術を開発し商品化に成功した企業である。沖縄を拠点とする環境ベンチャーとして注目を集めガラスびんリサイクルの新たな道を切り開いた。この事業の発端は同社が経営する飲食店で大量の空きびんが発生する状況を目の当たりにしたことだった。リサイクルの必要性を実感した経営陣は1997年に施行された容器包装リサイクル法を契機に廃ガラスびんを活用した新たな資源循環システムの構築に取り組むことを決意した。
トリムの歴史は1973年に商事会社として設立されたことに遡る。設立当初は自然食品や健康機器の販売を手がけ1979年には現在の株式会社トリムへと改称。教育サービス事業として速読教室の運営にも乗り出した。1994年には関連会社として株式会社トリムフーズを設立し飲食店経営を開始。この飲食事業が後のガラスびんリサイクル事業の着想へとつながることになった。
廃ガラスびんのリサイクルにおいて課題となったのは輸入ワインびんや栄養剤びんなどの緑色や黒色のびんが再生しにくく大半が埋め立て処分されていたことだった。さらにガラスびん工場が関東地方に集中していたため北海道や九州などの遠隔地で回収したびんを輸送するには高額な運送コストがかかるという問題もあった。こうした状況を打破するためトリムは廃ガラスびんを破砕し多孔質の軽量資材へと再生する技術を開発。これにより従来再資源化が困難だったびんを有効活用し環境負荷を低減するとともに新たな市場を創出することに成功した。
同社の技術は建築資材や土壌改良材など多用途に活用され地域の自治体や企業からの注目を集めた。この成功の要因には特許技術の活用が大きく寄与している。トリムはリサイクル関連装置において8件の特許を出願し他社との差別化を図った。加えて機械製造会社と共同で研究を進め成果の共同出願を行うことでより広範な市場への展開を可能にした。
現在沖縄県内では廃ガラスびんのリサイクル施設が複数設置されているものの県全域の需要を満たすにはあと7基の施設が必要とされている。新城社長は「地域内の廃棄物を地域完結型でリサイクルするために各自治体で装置を導入してほしい」と語っており県産資材としての用途拡大にも期待を寄せている。トリムの取り組みは環境保護と地域経済の発展を両立させるモデルケースとなっており今後も持続可能な資源循環社会の構築に向けた挑戦が続くことになるだろう。
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