Sunday, July 27, 2025

干潟の生態系保全をめざす地域活動 ―1996年10月 石川県加賀市―

干潟の生態系保全をめざす地域活動 ―1996年10月 石川県加賀市―

1990年代の日本では、高度経済成長期に行われた沿岸部の開発がもたらした環境破壊が顕在化し、干潟や湿地の生態系保全が重要課題として認識されるようになった。ラムサール条約が注目され始めたこともあり、全国で干潟の価値を再評価する動きが広がっていた。石川県加賀市では、開発により縮小した干潟の再生を目指す地域主導の活動が展開され、行政に頼らない市民の自主的な保全運動が注目を集めていた。地元住民や漁業関係者、環境保護団体が協力し、植生や底質の調査を通じて干潟の現状を把握し、その重要性を広く共有する試みが行われた。また、市民が主導して干潟の清掃活動や自然観察会を開催し、地域の子どもたちや家族連れが参加することで、干潟を「学びの場」「ふれあいの場」として再発見する機運が�
�まった。これらの取り組みは、単なる自然保護にとどまらず、暮らしと自然とのつながりを再構築し、地域コミュニティを活性化させる契機ともなった。加賀市の事例は、干潟という限られた自然空間を活かした持続可能な地域づくりのモデルとして、後の「里海」や「市民参加型環境管理」の先駆と評価されている。

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