Wednesday, July 30, 2025

衛生と資源循環の交差点 ― 壱岐市における紙オムツ回収モデル事業(2002年)

衛生と資源循環の交差点 ― 壱岐市における紙オムツ回収モデル事業(2002年)

2002年当時、日本社会は少子高齢化の進行が本格化し、特に地方では急速な人口構造の変化が現実の課題となっていた。長崎県壱岐市もその例外ではなく、高齢化率が30%を超える地域として、介護・医療・廃棄物処理の三重苦に直面していた。

こうした状況下で注目されたのが、使用済み紙オムツのリサイクル事業である。当時、紙オムツは可燃ごみとして大量に焼却され、自治体のごみ処理コストを圧迫していた。特に福祉施設や高齢者世帯から排出される紙オムツは、重量・量ともに大きく、焼却炉の負担や焼却灰の処理問題を引き起こしていた。

壱岐市はこの課題に対し、環境省の補助を受けて、紙オムツを専用機械で破砕・洗浄・乾燥し、衛生的な再資源として再利用するモデル事業に着手した。具体的には、施設内や家庭からの紙オムツを分別回収し、水洗と脱臭処理を経た後、パルプとして再生。農業用資材や断熱材などへの転用が試みられた。

この取り組みの意義は、単なる廃棄物の再利用にとどまらず、地域住民の分別意識の向上や、高齢者福祉と環境負荷低減の統合的解決を目指す点にあった。さらに、壱岐市という離島ならではの地理的制約(輸送コストや焼却施設の制限)も、資源循環の必要性を強く促した。

この実証事業は、のちの全国的な紙オムツリサイクル研究の先駆けとされ、2000年代半ば以降の福祉施設や自治体におけるリサイクル政策に大きな示唆を与えた。壱岐市の試みは、人口減少時代における地域資源の活用と、自立的な福祉・環境政策の両立を模索する、先進的な実践だったのである。

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