Wednesday, July 30, 2025

被官さま参りと水商売の哀歓――昭和46年12月(昭和46年)

被官さま参りと水商売の哀歓――昭和46年12月(昭和46年)

昭和46年の東京・浅草には、戦後の混乱を経た都市の哀愁と下町人情が残り、水商売の人々は素朴な信仰にすがって生きていた。浅草寺の裏手に佇む「被官稲荷」は吉原や芸者、役者らが崇めた神で、石垣や鳥居には遊郭や侠客・新門辰五郎の名が刻まれている。辰五郎が妻の狐憑きが治った礼として奉納した鳥居は、この神社の信仰の深さを象徴する。筆者も無神論者ながら、その祈りの姿に惹かれ参拝を始めた。水商売に未来はなく、一寸先は闇。せめて神に頼るしかない。夜の浅草、灯籠の下の男、石段の街娼、そして自らの青春が重なり、都市の時間の堆積がそこに感じられた。高度経済成長の波に都市が包まれても、こうした周縁の人々の暮らしは変わらず、小さな神社に集約されていた。「被官さま参り」は、逃避でも理�
��でもなく、生の精気をつなぐ行為であった。

No comments:

Post a Comment