Thursday, July 31, 2025

都市のリズムに逆らって——名古屋の水再利用計画 -1995年4月

都市のリズムに逆らって——名古屋の水再利用計画 -1995年4月

1995年当時、日本は高度経済成長からバブル崩壊を経て、環境と経済の調和が求められる時代に突入していた。特に都市部では、人口集中と工業化による資源の逼迫が顕在化し、水資源の確保が喫緊の課題となっていた。そんな中、愛知県名古屋市は、水資源の有効活用を目的に「中水道」と呼ばれる下水再利用システムの導入に乗り出した。

この中水道とは、生活排水や工業排水などの下水を高度に処理し、工場の冷却水や公園の散水、清掃用水などに再利用するものである。飲用には適さないが、用途を限定することで新たな水源として機能させる先進的な取り組みであった。名古屋市はこの中水を、主に港区や中川区の工業地帯、公園、浄化センターなどに供給し、年間数千万リットル規模で利用を実現していた。

当時の名古屋市では、環境局を中心に市民への啓発活動も行われ、浄水場や中水道の処理施設に見学ルートを設けるなど、教育的側面にも配慮が見られた。また、企業側にも中水導入のメリットをアピールし、料金割引などのインセンティブ策を導入することで利用を促進した。これは、1992年の地球サミット以後に高まった「持続可能な開発」思想と、行政による具体的な実践との結節点に位置づけられる。

さらに、中水の導入は全国的にも関心を集め、福岡市や横浜市などでも追随する動きが見られた。都市と水の関係が再定義されつつあったこの時代、名古屋の挑戦は、生活インフラの革新と環境意識の高まりが交差した象徴的な事例であると言える。生活の利便性と環境保全の両立という難題に対し、「都市のリズム」に逆らいながらも未来を見据えた試みは、今なお示唆に富む。

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