Friday, August 29, 2025

IEAエネルギー見通し(2007年)

IEAエネルギー見通し(2007年)

2007年に公表された「World Energy Outlook 2007」は、21世紀前半のエネルギー構造変化を予測した重要な文書である。当時、世界経済はBRICsを中心に高成長を遂げ、石油価格も高騰し続けていた。国際原油価格は2007年夏に1バレル70ドルを超え、2008年には100ドルに迫ると予測され、エネルギー安全保障と温室効果ガス削減の双方が各国にとって喫緊の課題となっていた。

報告書では2030年までに世界の一次エネルギー需要が約50%増加すると試算され、その大半が新興国、とりわけ中国とインドによるものであると指摘された。中国は排出権取引を通じ年間30億ドル規模の収益を見込み、これは2005年施行の京都議定書の下で拡大した「クリーン開発メカニズム(CDM)」市場の存在感を物語る。インドでは輸入依存度の高い石油を抑制するため、ガソリンに10%のエタノール混入を義務化し、農村部でのバイオ燃料生産振興を進めた。

米国では化石燃料依存の見直しが進み、セルロース系バイオマスを原料とするエタノール精製工場が初めて商業化。トウモロコシ由来バイオ燃料の「食糧との競合」問題を回避するため、木質や農業残渣を利用した次世代燃料が注目された。英国では通信大手BTが2016年までに自社エネルギーの25%を風力で賄う計画を表明し、EU全体で再生可能エネルギー導入目標(2020年に20%)が議論されていた。

この時期は、京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)を目前に控え、ポスト京都の国際枠組みを模索する過渡期であった。各国が再エネ導入や排出権取引に積極的に動き出した背景には、地球温暖化への危機感とともに、エネルギーを巡る地政学的リスク(中東依存や資源ナショナリズムの高まり)があった。「World Energy Outlook 2007」は、単なる需給予測を超え、気候変動と経済・産業政策を結びつける国際的指針として大きな影響を与えた。

このように、IEAの展望はエネルギー需要増大への警告であると同時に、低炭素社会への移行を各国に迫る時代の要請を反映したものであり、後の再生可能エネルギー拡大や排出権市場形成の基盤をつくったと言える。

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