静かなる死の行進──オウムとバイオテロの記憶
1990年代、日本ではオウム真理教による化学兵器を用いた未曽有のテロが発生した。1995年の地下鉄サリン事件では、東京の通勤電車内に猛毒のサリンが撒かれ、14人が死亡、6000人以上が負傷。教団は科学技術を信仰に組み込み、信者の中には科学者や医師もいた。1994年には松本市でも同様のサリン散布が起き、民間人を巻き込む無差別攻撃が続いた。さらに、炭疽菌やボツリヌス菌の培養も試みられ、未遂ながら日本でのバイオテロが実行されかけていた。一方、2001年のアメリカでは、9.11の直後に炭疽菌が封入された郵便物が送りつけられ、5人が死亡する事件が発生。これらの出来事に共通するのは、目に見えぬ毒と恐怖が人々の生活を一変させた点である。科学がもたらす力が宗教や暴力と結びついた時、静かに、だが確実に、死
が日常へと侵入するのである。
No comments:
Post a Comment