野見宿禰と力比べの神話——相撲の起源と葬送の革新
野見宿禰(のみのすくね)は、古代日本の伝説的な人物であり、出雲国の出身とされる。『日本書紀』によれば、彼は第十一代垂仁天皇の時代に登場し、大和国に住む豪力の持ち主、当麻蹶速(たいまのけはや)と力比べを行った。蹶速は「天下に並ぶ者なし」と自負していたが、天皇は彼と対等に戦える者を求め、野見宿禰を召し出した。都に招かれた宿禰は、蹶速と壮絶な戦いを繰り広げ、蹴り合いの末にその腰を砕いて勝利を収めた。この出来事が、日本の相撲の起源とされる。
また、野見宿禰は土師(はじ)氏の祖とされ、葬送文化の改革にも関わった。当時、天皇や豪族の死後には、従者が殉死する風習があった。しかし、宿禰はこれを改めるために、代わりに埴輪(はにわ)を用いることを提案し、以後、土師氏が埴輪を作る役割を担うようになった。彼の提案によって殉死の風習は廃れ、葬送の形が変化した。
このように、野見宿禰は相撲の始祖として名を残すだけでなく、葬送文化の発展にも寄与し、日本の歴史と文化に深い影響を与えた人物である。
No comments:
Post a Comment