関東の血風――山極抗争と二人の首領の対峙（1993年）

関東の血風――山極抗争と二人の首領の対峙（1993年）

平成五年、関東一円は「山極抗争」と呼ばれる暴力の連鎖に飲み込まれていった。五代目山口組と極東会、二つの巨大組織が東京を主戦場に死闘を繰り広げた。バブル崩壊後の混乱の中、山口組は関東進出を加速し、既存勢力の極東会の縄張りに容赦なく侵食した。極東会は繁華街の利権を死守すべく組員を動員し、歌舞伎町を「最後の砦」として防衛線を築いた。特に有名なのは、極東会幹部がクラブビル屋上に見張りを配置し、山口組系車両を双眼鏡で監視した逸話だ。都内、埼玉、千葉で二十件を超える発砲事件が続発し、一般市民の不安は頂点に達した。松山眞一会長は徹底抗戦を試みたが、弘道会・宅見組など武闘派を投入する山口組の圧力に防戦一方となり、住吉会・稲川会の仲裁で秋には部分停戦が成立した。一方、渡
辺芳則組長は現場に出ることなく冷徹に関東制覇を推進し、最終的に停戦を受け入れ組織温存を選んだ。抗争後、極東会は縮小、山口組は関東地盤を固めた。街の空には、確かに血の匂いを運ぶ風が吹いていた。