土に還る暮らし ― 東京都練馬区の生ごみ堆肥化プロジェクト(2003年)
2003年、東京都練馬区では、家庭から出る生ごみの減量と資源循環を目指して、住民主体の堆肥化プロジェクトが本格始動した。背景には、都市部での廃棄物処理費用の高騰と、埋立地の逼迫という切実な課題があった。特に練馬区は、農地や公園が比較的多く残る東京の中でも緑豊かな地域であり、住民の環境意識も高かったことが、この取り組みを後押しした。
当時、東京都全体でもごみ処理の見直しが叫ばれ、リサイクルの三本柱――「減量」「再使用」「再資源化」――の実現が求められていた。中でも生ごみは全体のごみ量の3割以上を占める難敵であり、焼却ではなく自然の力で還す「堆肥化」は、都市型リサイクルの実験的かつ希望的なモデルとして注目された。
練馬区の取り組みでは、自治会や市民団体、NPO法人などが協働し、各家庭に家庭用コンポスト容器を配布し、定期的な指導と成果のフィードバックを行った。回収された堆肥は、近隣の農地や公園の緑化整備に活用され、都市における「循環の見える化」が実現した。市民が「作ったごみが土に戻り、花や野菜を育てる」という循環を体感できることは、単なるリサイクルを超えた環境教育の側面も持っていた。
この練馬区の事例は、都市と自然の調和の可能性を示すものであり、持続可能な社会への道筋を模索する中で、小さな一歩ながら確かな実践として評価されている。今も多くの自治体にとって、生ごみ資源化の先行モデルとして語り継がれている。
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