闇を越えて運ばれる家電 ―― 使用済み機器と環境の代償(2006年9月)
2000年代半ば、日本は環境先進国としての自負を強め、家電リサイクル法などを通じて循環型社会の構築を目指していた。2001年に施行されたこの法律は、冷蔵庫やエアコンなど使用済み家電を適切に処理・再資源化する仕組みを整えた。しかしその一方で、制度の盲点を突くかのように、大量の使用済み家電が「中古品」の名のもとに、アジア諸国へ違法に輸出されていた。
それらの家電は、現地で再利用されるわけではなく、多くは劣悪な環境下で解体・焼却されていた。鉛やカドミウム、水銀といった重金属を含む部品、有害ガスを含む冷媒などが、ろくな処理もされずに空気へ、水へ、土壌へと流れ出し、周囲の生態系を汚染していった。フィリピン、ベトナム、中国南部の川や野原には、日本から届いた「資源の残骸」が広がり、その毒にさらされるのは現地の住民と動植物だった。
国内では、こうした輸出を防ぐ法的措置が不十分で、「中古」と「廃棄物」の境界線も曖昧だった。港湾ごとの監視体制にも格差があり、税関もすべてを把握しきれていなかった。表向きのリサイクル率は向上していたが、見えないところで日本の環境負荷は他国へ押しつけられていたのだ。
この「見えざる輸出」は、資源循環社会の理想とはほど遠い現実だった。日本国内で処理費用を避ける代償として、アジアの空や川が汚される。その事実は、環境と経済のバランスを問い直す時代の鏡でもあった。
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