1990年以降、新聞・雑誌広告やテレビコマーシャルなどのマスメディアに「環境広告」と呼ばれるものが登場しました。
当初の環境広告は「地球にやさしい」「われら地球家族」などの抽象的な言葉で代表される企業のイメージアップを狙ったものが多く見られました。
この背景には、環境保全が新たな企業イメージを形成するキーワードとなり、CI(コーポレート・アイデンティティ)の手法の一つとして考えられ始めたことがあります。
換言すれば、CE(環境重視型経営戦略)が90年代の重要企業戦略の一つの柱になったということです。
しかし、一連のイメージ先行型の環境広告は、環境問題に対する企業の理念や姿勢、具体的な取り組みや提案が不明瞭なために、広告としてのインパクトを欠いたため低迷しました。
この後、日本の環境広告は、企業の社会的責任として情報開示や説明責任を消費者から厳しく求められる欧米の環境広告の動きとは反比例し、減少傾向をたどりました。
再び増加する環境広告。
最近になり、再び環境広告が増え始めました。
90年代半ばを過ぎたあたりから、イメージ先行の広告は減り、代わって企業の環境への取り組みをしっかりと示す新しいタイプの広告が見られるようになってきました。
私たちエコビジネスネットワークが提唱してきた「環境広告」の3大要素とは、1.環境に対する理念や取り組みを一般にわかりやすく提示すること、2.環境報告書をはじめとする環境情報の開示を積極的に行うこと、3.消費者への環境教育的な側面を持っていること、の3つです。
これらはCE(環境重視型経営戦略)とも呼ぶべき企業広告の新しい手法であり、国際社会に通用する「環境広告」には絶対不可欠な要素だと考えています。
先駆的役割を果たすボルボ。
日本の環境広告の先駆的役割を果たしてきたのが、スウェーデン最大の自動車メーカー、ボルボの日本支社、ボルボ・カーズ・ジャパンです。
衝撃的なコピーと説得力を備えた広告は、常に大きな反響を呼んできました。
同社の広告の第1弾は、1990年に発表された「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています。」と、生産プロセスにおける環境対策への取り組みを説明したボディコピーのみというものでした。
当時は1992年の地球サミットに向けて、日本の経済界・産業界も「環境」に目を開き始めていた時期だったため、この広告の与えたインパクトは大きかったです。
この大胆なコピーには、同社が1989年にあらゆる企業活動において環境への配慮をすることを謳った「環境声明書」を発表したという確固たる裏付けがありました。
その後、1995年には環境破壊データの公開を謳った広告で再び注目を引きました。
本社が1995年以降、自動車の生産プロセスから廃棄に至るまでの環境への負荷データ公開を決定し、各車種について環境仕様書を作成すると発表したことで制作されました。
同社が環境広告に求める特性は、1.製品イメージの訴求効果ではなく、企業の環境に対する哲学や姿勢を伝えること、2.製品が環境へ与える負荷などの情報を開示すること、3.作る側から使う側まで全ての関係者の意識啓発を図ること、の3つです。
同社の環境広告のもう一つの特徴は、発表の場を新聞掲載に限っていることです。
これは同社が環境広告はメッセージの正確な伝達を要求すると考えているからです。ヴィジュアルメッセージに頼って曖昧さが生じるのを避け、活字メディアによる説得力を活かしたのはそのためです。
活字媒体でも雑誌を利用しないのは、読者対象の偏りを避けるためです。あくまでもマスによる公共性にこだわっています。
日本企業の動向。
日本企業の環境広告も、徐々に変わりつつあります。
その一例が、1997年3月26日にキリンビールが新聞紙上に掲載した企業広告です。
掲載された環境広告は「3つのRと2つのA」というキーワードで自社の環境理念を明確化しています。
さらに「達成目標」や「主要テーマ」、 「実施状況」などをまとめた環境報告書を提示することで、情報の開示ばかりでなく、消費者に対する環境啓蒙活動にも貢献しています。
キリンの社会環境部では、広告の効果について「環境への取り組みを積極的に公開することで、企業のイメージアップはもちろん、社内の環境意識の向上にも効果があったのでは」と話しています。
また、環境情報の開示についても「取り組みの成果(努力の度合い)を対外的に示すことに、不安も抵抗もない」と積極的です。
自治体の動き。
さらに、ここ1、2年の環境広告の特徴の一つとして、自治体が環境をテーマに全国紙に全面広告を掲載するケースが見られるようになったことがあります。
企業の役割の重要性。
企業が環境の維持・保全、資源循環型社会の構築に担う役割はますます大きくなっています。
企業の地球環境に対する理念や取り組みを内外に浸透させていくとともに、消費者意識を大量消費・大量廃棄から資源循環型へと変化させていくことを目的にした「環境広告」の果たす役割はより一層重要になってきています。
こうした環境広告制作にあたって、大量消費社会をリードしてきた大手代理店には人材が少ないこともあり、環境を足元に置いた気鋭の中堅広告代理店がシェアをゆるやかに獲得しつつあることも見逃せません。
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