Tuesday, October 28, 2025

人間の代弁者は神か、アルゴリズムか——宗教と科学の役割転換(2020年代)

人間の代弁者は神か、アルゴリズムか——宗教と科学の役割転換(2020年代)

中世までの世界観において、宗教は宇宙の構造と人生の意味の双方を統合的に説明してきた。キリスト教や仏教、イスラム教などは、神の意志やカルマを通じて出来事の因果と倫理を結びつけ、人間の生きる意味を与えていた。すなわち、信仰こそが「意味」の供給源であり、人々の共同体や道徳はそれを基盤に築かれていた。

しかし、17世紀以降の科学革命と18〜19世紀の啓蒙思想の拡大により、世界は神の手から物理法則や進化論のもとに移行し始める。神は宇宙の創造主から徐々に社会的な象徴へと後退し、代わって科学が事実の世界を支配しはじめた。だが、科学は目的を持たず、ただ因果と再現性を追い求める。核兵器やAI、バイオテクノロジーの登場は、人類に「何が可能か」を教えるが、「何をすべきか」は語らない。

ハラリはこのねじれを鋭く指摘する。宗教は意味を与えていたが手段に乏しく、科学は手段を無限に増幅するが意味を与えない。この断絶の中で、人類は倫理と目的の空白を抱えたまま、超人的能力に手を伸ばしている。現代社会では、科学が宗教のように制度化され、信仰の対象にもなりつつあるが、その信仰は"なぜ生きるか"ではなく"どう効率よく生きるか"に傾斜している。

また、2020年代はAIによる判断の自動化や、パンデミック時における「科学的判断」への信頼と政治の乖離など、科学と社会秩序の緊張が先鋭化した時代でもある。人々は専門家やアルゴリズムを「新たな神」として信頼しつつある一方で、意味と価値の空洞を埋められず、分断と混迷を深めている。

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