すみかの喪失―熱帯林伐採と人間活動が生んだ縮図
熱帯林の伐採は20世紀後半から急速に進行し、21世紀に入るとその速度はさらに加速した。東南アジア、特にインドネシアやマレーシアでは、パーム油生産の拡大が最大の要因となり、かつて豊かな多様性を誇ったボルネオやスマトラの森林は、広大なプランテーションに置き換わった。これによりオランウータン、スマトラトラ、マレーグマといった大型哺乳類が絶滅の危機にさらされた。彼らは樹上や広大な森林を必要とするが、人間がそれを奪い続けた結果、生息域は細切れに分断され、個体群は縮小と孤立を余儀なくされた。
時代背景には、1970年代以降の「緑の革命」と国際市場の拡大がある。人口増加と工業化の進展で、安価で大量の植物油や大豆、牛肉、紙パルプが求められ、熱帯林は「未利用資源」として次々と転換された。特に1980年代以降の世界銀行やIMFによる開発融資は、多くの途上国に森林伐採を伴う大規模農業の拡張を促し、国家財政の外貨獲得手段としても森林が利用された。
イングランドでも草地の減少が調査されており、かつての牧歌的風景を支えていた生物多様性が失われている。20世紀の農業機械化と化学肥料・農薬の使用は、草地や牧草地を単一作物畑へと変え、チョウやミツバチ、野鳥の生息環境を奪った。この「すみかの喪失」は熱帯林に限らず、温帯の農村景観でも進行している。
さらに1990年代から2000年代にかけては、気候変動対策としての「バイオ燃料」需要が森林を圧迫した。欧米諸国が再生可能エネルギーとしてパーム油や大豆油を燃料に利用し始めた結果、熱帯林伐採が「環境に優しい選択」として推進されるという逆説が生まれた。
このように、時代の経済的要請と政策的後押しが「すみかの喪失」を加速させてきた。今日、国際NGOや研究者は「森林認証制度」や「サステナブル・パーム油認証(RSPO)」を通じて持続可能な供給を訴えるが、現場では依然として違法伐採や焼畑が続いている。
熱帯林の破壊もイングランドの草地の消失も、人間活動が生活の基盤を優先するあまり、他の生物の居場所を軽視してきた歴史を映している。すみかを失った種の多くは二度と戻らず、それは人間自身の未来の豊かさをも削いでいるのである。
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