Sunday, November 30, 2025

ソ連の若者が抱いた共産主義への疑問と停滞の時代の影 1970-1975年

ソ連の若者が抱いた共産主義への疑問と停滞の時代の影 1970-1975年
1970年代のソ連は、ブレジネフ体制による安定と停滞が同時に進行し、社会全体が硬直化していた。共産主義建設という国家目標は繰り返し宣伝されていたが、生活実感とは結びつかず、空疎なスローガンとして若者の心から離れていた。ファイルに記録された若い女性の「なぜ共産主義社会を建設しているのかわからない」という言葉は、体制の形式化と、理念と日常の乖離を鋭く突くものである。
大学生の「政治の問題は難しくて答えられない」という発言も、単なる無知ではなく、政治的に不用意な発言を避けるための防衛であり、同時に何を言っても無意味という諦念を示す。若い将校が兵役制度や社会制度への不満を率直に漏らす姿は、軍内部の抑圧と暴力文化(デードフシナ)の存在すら暗示しており、国家内部ですら忠誠心が揺らぎ始めていたことが読み取れる。
一方、西側から流入するロック音楽やファッション、映画などの文化は、若者に新たな価値観と外の世界への想像力を与え、体制への距離感を広げた。体制が求める"模範的青年像"と、若者が感じる閉塞感や個性の欲求はまったく重ならず、表と裏の二重生活が日常化していた。

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