小型焼却炉での排ガス洗浄技術(1990年代・クボタ)
1990年代、日本では一般廃棄物処理の多くを焼却に依存していたが、中小都市が保有する小型焼却炉ではダイオキシンや酸性ガス、ばいじんの排出が深刻な問題となっていた。低温燃焼や不十分な温度管理によって有害物質が多量に発生し、1997年の厚生省調査では全国のダイオキシン排出量の大半が小型焼却炉由来とされ、社会的な批判が高まった。自治体には設備更新と排ガス処理の強化が求められ、限られたスペースと予算でも導入できる高性能洗浄技術が必要とされていた。
こうした背景の中でクボタが開発した排ガス洗浄装置は、小型焼却炉向けに最適化された省スペース設計でありながら、大規模施設と同等の浄化性能を実現した点が特徴である。急冷方式によってダイオキシンの再生成を防ぎ、バグフィルターでばいじんと共にダイオキシン類を捕集し、さらに酸性ガスを中和する湿式洗浄や乾式吸着を組み合わせた多段処理によって有害物質を大幅に削減した。これにより中小都市でも環境基準を満たす安全な焼却運転が可能になった。
加えて、自動制御機能や警報システムの導入により運転管理が容易となり、自治体現場の負担軽減にも貢献した。この装置は、1990年代のダイオキシン規制強化の流れの中で中小規模自治体の環境対策を支え、地域の大気環境保全において重要な技術となった。
No comments:
Post a Comment