カネカの生分解性プラスチック"グリーンプラ"(1990年代)
1990年代、日本では海洋ごみ問題や最終処分場の逼迫が深刻化し、プラスチック依存型社会の限界が社会的に認識され始めた。焼却によるダイオキシン問題、海岸への漂着ごみ、レジ袋の散乱などが注目され、環境省や自治体もプラスチック削減の方向へ舵を切り始めた時期である。こうした背景の中で、生分解性プラスチックの研究開発が国内外で加速し、自然環境中で分解される新たな素材への期待が高まっていた。
この流れの中でカネカが開発した"グリーンプラ"(PHBH)は、微生物の代謝産物を利用して製造されるバイオポリマーで、土壌中だけでなく海水中でも分解が進む点に大きな特徴があった。多くの生分解性プラスチックが工業的堆肥化という特殊条件下でしか分解しないのに対し、グリーンプラは自然界に近い環境で分解が可能であり、海洋プラスチック問題に直接応答する素材として注目された。
さらにフィルム、食品包装、農業用資材、ストローなど幅広い用途に対応できる加工適性を持ち、従来のプラスチックに近い性能を備えていた点から、企業が採用しやすい素材として評価された。植物由来の炭素を利用するためカーボンニュートラルにも寄与し、持続可能な素材開発の先駆けとして位置づけられた。
グリーンプラは、単なる環境配慮素材ではなく、プラスチックのライフサイクル全体を見直し、自然循環型社会を志向する象徴的な技術であり、現在のバイオプラスチック研究にも影響を与え続けている。
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