Sunday, November 30, 2025

ママはライバル(1972〜)――少女漫画とテレビが描いた“家庭と女性のゆらぎ”の時代(1970年代)

ママはライバル(1972〜)――少女漫画とテレビが描いた"家庭と女性のゆらぎ"の時代(1970年代)

「ママはライバル」は、忠津陽子と佐々木守による少女漫画を原作とし、1972〜73年に大映テレビ制作・TBS系でドラマ化された作品である。物語は女子高生の早乙女ジュンと、彼女の父と結婚するために上京してきた転校生・青海マリとの対立を軸に展開する。母と娘が同級生として同じ男性をめぐり張り合うという極端な設定は、単なるコメディに留まらず、当時の社会における"女性の役割"の揺れを象徴していた。1970年代前半の日本では、ウーマンリブ運動の浸透や核家族化の進行により、母親像や家族像が急速に変化しつつあった。少女漫画はこの変化を敏感に捉え、若い女性が自分の感情や欲望、将来を自分のものとして考える"心情文学"へと発展していた。「ママはライバル」の根底には、母親も娘も"家庭の役割に縛�
�れた存在"ではなく、一人の女性として葛藤しうるという視点がある。また、ドラマ版が人気を得た背景には、当時のテレビが家庭内のズレや世代間摩擦を笑いに包んで描く傾向が強かったことも大きい。1970年代の社会が抱えていた、家族制度の再編と女性の自立への模索が、本作を通して大衆文化に軽やかな形で映し出されていたと言える。

No comments:

Post a Comment