アスベストの影を切り裂く技術の夜明け 日本が静かに転換した時代 2000年代前半から後半
日本でアスベスト問題が社会の中心に浮上したのは二〇〇五年のクボタショックであった。高度経済成長期に大量使用されたアスベスト建材は学校やビルなどに広く残り中皮腫の発生が報じられ国は除去作業の質と安全性を根本的に見直すこととなった。規制は急速に強化され飛散防止と残留防止は従来よりも厳しく求められ現場では新しい技術が不可欠となった。
飛散抑制剤ニューダイロックはこうした要求に応じて生まれた技術である。従来の水による湿潤化では抑えきれなかった繊維の舞い上がりを被膜形成によって封じ込める仕組みで複雑な構造や天井裏などにも効果を発揮した。二〇〇〇年代後半には公共工事仕様でも採用され飛散防止技術の中心となった。
一方除去作業後に残る微細繊維をどう除くかという問題に応えたのがハイカット工法である。コンクリート表面の極薄層を切削し同時に集じんする方式により肉眼では確認できない残留繊維を取り除き再飛散の危険を大幅に低減した。これにより学校や病院など高い安全性が求められる施設で採用が進んだ。
ニューダイロックとハイカット工法はアスベスト対策が量から質へ転じた時代の象徴であり日本が過去の負債と向き合いながら新しい安全基準を築こうとした技術的転換点に位置付けられる。
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