アマモ場造成技術 播種シート法が海をよみがえらせた時代 2000年代前半から後半

アマモ場造成技術 播種シート法が海をよみがえらせた時代 2000年代前半から後半

アマモは海のゆりかごと呼ばれ小魚や甲殻類のゆりかごとして沿岸生態系を支えてきた。しかし日本では高度経済成長期の埋め立てや赤潮底質悪化が重なり東京湾大阪湾瀬戸内海などでアマモ場が急速に失われていった。一九七〇年代から九〇年代にかけて衰退が顕著となり漁業者や研究者は危機感を募らせていた。

二〇〇〇年代に入ると環境省の海域モニタリングが強化され京都議定書以後の国際的な生態系保全の潮流を受け日本でもブルーカーボンや生態系サービスの視点が広がり始めた。アマモ場再生は漁業資源の回復のみならず炭素固定効果を含む多面的価値を持つとして注目されるようになった。

その中で登場したのが播種シート法である。従来の苗植え方式は苗の育成に時間と費用がかかり潮流で流失するリスクも高く大規模な再生には限界があった。播種シート法は秋に採取した成熟種子を基盤材に混ぜ薄いシート状に加工し冬から早春に海底へ設置する。シートが徐々に分解するにつれ種子が自然散布され環境に適した場所で自ら発芽し定着する。

施工コストの低減作業時間の短縮維持管理の軽減大規模造成への適性が評価され二〇〇〇年代には瀬戸内海三河湾志摩沿岸などで導入が始まった。播種シート法は海の再生力を引き出しアマモ場を自然な形で回復させる方法として高く評価された。

その後アマモ場は海の森として再価値化され炭素貯留源としての注目も高まり環境教育地域漁業との連携観光資源としての海づくりへもつながっていく。播種シート法は失われた海と人の関係を静かに修復する技術として沿岸域再生史に確かな足跡を残した。