土の記憶をよみがえらせる三つの扉 汚染地の素顔が明らかになった時代 2000年代前半から後半

土の記憶をよみがえらせる三つの扉 汚染地の素顔が明らかになった時代 2000年代前半から後半

二〇〇〇年代の日本では土壌汚染が社会問題として可視化される転換期を迎えた。高度経済成長期に蓄積された化学物質が都市再開発の進行とともに姿を現し環境ホルモン問題の不安も重なって二〇〇二年の土壌汚染対策法施行へつながった。この法律により土地の調査浄化管理が体系化されフェーズ I から III に進むEPA方式が日本に定着した。

フェーズ I は土地の過去を読み解く工程であり工場などの履歴から汚染リスクを判断する。不動産取引が活発化した時期で環境デューデリジェンスが標準となった。フェーズ II ではボーリング調査や化学分析によって汚染の実態を把握しトリクロロエチレンなど地下水汚染の社会的注目から調査精度が高まった。

フェーズ III では掘削除去土壌洗浄バイオレメディエーションなど多様な浄化手法が選ばれ二〇〇〇年代後半には土地利用目的に応じたリスクベース管理が普及した。浄化後のモニタリング体制も整い企業と地域が協働して持続可能な環境管理が形成された。この三段階は日本社会が公害の負債と向き合い都市の未来を再構築する過程を示している。